📅 この記事の情報は2026年4月時点のものです。最新情報は各自治体や厚生労働省のウェブサイトでご確認ください。
「何を言っても通じない…」
「まるで宇宙人と話しているみたいで、どう接したらいいのか分からない…」
認知症の方と関わる中で、こう感じてしまうのはとても自然なことです。それだけ真剣に向き合っている証拠でもあります。
介護は「正解がひとつではない」からこそ、戸惑いが大きくなりがちです。この記事では、社会福祉士・介護福祉士として15年の現場経験をもとに、介護初心者でも無理なくできる関わり方を解説します。
大切なのは「正解を探すこと」ではなく、お互いが穏やかでいられる関係性をつくることです。
3つのポイントと場面別の対応例で、今日からできる関わり方をお伝えします。
まず知っておきたい基本的な考え方
認知症=「何もわからない」ではない
認知症とは、記憶や判断力が低下する病気の総称です。ただ、感情やプライドはしっかり残っていることが多いのが特徴です。(参考:厚生労働省「認知症施策」)
| できなくなること | でも、残っていること |
|---|---|
| 記憶が薄れる・忘れてしまう | 「不安」「恥ずかしい」などの感情 |
| 物事の理解が難しくなる | 「否定されると傷つく」という感覚 |
| 言葉がうまく出てこない | 「大切にされている」という安心感 |
「できないこと」より「感じていること」に目を向けることが大切です。
失敗した「事実」は忘れても、そのときの「感情」は残る
認知症の方は、失敗したくてしているわけではありません。
現場で強く実感するのは、失敗した事実は忘れても、「恥ずかしい」「怖い」「怒られた」という気持ちは、心にトゲのように残りやすいということです。ここでイライラして叱ってしまうというのは良くあることですが、例えば排泄で失敗してしまった場合に、「何してるの!誰が片付けると思ってるの!」と叱られた場合と、「大丈夫だよ、片付けるから心配しないでいいよ」と声かけの仕方が違うだけで、本人の感じ方が変わってきます。
事実を正すことよりも、その場を穏やかな気持ちで終えることが、その後の関係を大きく左右します。
「笑顔で終える関わり」が、次の穏やかな時間をつくります。
→ 認知症の症状(中核症状・BPSD)についてもっと詳しく知りたい方はこちら:認知症介護のイライラを減らすコツ|「中核症状」と「BPSD」をやさしく解説
関わり方の基本 3つのポイント

認知症の方との関わりで大切なのは、次の3つです。この3つを意識するだけで、関わり方は大きく変わっていきます。
| ポイント | どういうこと? |
|---|---|
| ① 否定しない | 間違いを指摘するより、まず受け止める |
| ② 気持ちに寄り添う | 「なぜ?」を問うより「そう感じているんだね」と共感する |
| ③ 無理をしない | 完璧にしようとせず、できる範囲でOKと考える |
場面別|関わり方の具体例
① 同じことを何度も聞かれるとき
認知症の方にとっては、毎回が「初めて」の感覚です。ついイライラしてしまいますが、無理に覚えさせようとしないことが大切です
| ❌ NG(避けたい言葉) | ✅ OK(おすすめの言葉) |
|---|---|
| 「さっき言ったでしょ」(繰り返すことへの叱責) | 毎回、短く・安心できる言葉で答える メモやカレンダーを活用して視覚的に伝える |
「さっき言ったでしょ」という言葉は、不安を強めてしまうことがあります。本人は初めてだと感じているのに「さっき言った」と言われると、「初めて聞いたのになんでそんなこと言われるの?」と思って不安になってしまうということです。
② 「財布を盗られた」と言われたとき
これは「もの盗られ妄想」と呼ばれる症状のひとつです。実際には盗まれていないのに、そう感じてしまう状態です。否定すると逆効果になりやすいため、まず気持ちを受け止めることが重要です。
| ❌ NG(避けたい言葉) | ✅ OK(おすすめの言葉) |
|---|---|
| 「そんなわけないでしょ」 「自分でなくしたんでしょ」 | 「それは不安だったね」 「一緒に探してみようか」 |
見つかった後の言葉も大切です。
| ❌ NG(避けたい言葉) | ✅ OK(おすすめの言葉) |
|---|---|
| 「ほら、あったでしょ!」 | 「あぁ、よかったね」と一緒に安心する |
事実よりも「安心感」を優先することで、嫌な感情を残さず終えることができます。「財布を取られてしまったんだね」と受け止めて、一緒に探し、見つかったときに「見つかってよかったね」と一緒に安心する。この対応で穏やかにその場を過ごすことができます。
「嘘をつくのは心苦しい」と感じるかもしれませんが、これは嘘ではありません。ご本人が見ている『不安な世界』に、隣り合わせで座ってあげるようなイメージです。正しさよりも、そばにいてくれる安心感が伝わることのほうが、ずっと大切なのです。
③ 怒りっぽくなったとき
認知症の方は、うまく伝えられないストレスで怒ることがあります。このときは、無理に関わり続けるより、一度距離をとることが有効です。
| 対応方法 | 具体的なやり方 |
|---|---|
| 物理的に距離をとる | 別の部屋に移動する |
| お互いに落ち着く時間をつくる | 5〜10分ほどお茶を飲んで一息つく |
視界から離れることで、お互いの興奮が自然と落ち着きやすくなります。正面からぶつからないことが、結果的に良い関係につながります。介護者が自分以外にもいる場合には、一旦他の介護者に対応を変わってもらったり、お茶やコーヒーを飲んで落ち着くことで気分が変わり怒りが収まることもあります。
④ 介護を拒否されるとき
入浴や着替えを嫌がるのはよくあることです。目的をそのまま伝えず、言葉を工夫することと、時間に余白を持つことが大切です。
| ❌ NG(避けたい言葉) | ✅ OK(おすすめの言葉) |
|---|---|
| 「お風呂入ろう」(目的をそのまま伝える) 急かしたり、強引に誘う | 「さっぱりしに行こうか」(言い方を変える) 「ちょっとお背中流してくれませんか?」とお願いにする 「新しいタオルがあるから試してみて」と目的をずらす |
今は「嫌だ」と言われても、15分ほど時間を置くだけで、気持ちが変わってすんなり応じてくれることは現場でもよくあります。「今やらなきゃ」と思うほど、関係はうまくいきにくくなります。「少し待つ」ことも、立派な関わり方です。
入浴拒否の場合は、「脱いで寒いのが嫌」「脱ぎ着が億劫」「他のことが気になっている」などの理由も考えられます。暖房をつけておく、「一緒に手伝うから着替えに行こう」と声かけを変える、どうしてなのか傾聴(話していることに共感しながら耳を傾けて聞く)してみるといった対応も効果的です。また、お風呂は週3回入れたらいいかな、と「毎日入らなきゃ」からハードルを下げて考えるのも、長く続けるための大切な視点です。
無理をしないための3つのコツ
| コツ | 考え方・具体的な方法 |
|---|---|
| ① 完璧を目指さない | うまくいかない日があって当たり前。イライラしてしまうのも自然な反応です。「できる範囲でOK」と考えることが、長く続けるコツです。 |
| ② 一人で抱え込まない | 地域包括支援センター・ケアマネジャー・デイサービスなどを活用しましょう。窓口に行かなくても、まず電話で「少し困っていて…」と話すだけでOKです。 |
| ③ 自分の時間を確保する | 数時間でも離れる時間をつくる・意識して休む日をつくることが大切です。あなたが疲れきってしまうと、やさしく関わることも難しくなります。 |
どうしてもつらいときは
「もう無理かもしれない」と感じることもあると思います。それは弱さではなく、それだけ本気で向き合ってきた証拠です。
- 家族や専門職に相談する
- 介護サービスを使う
- ショートステイ(短期間の施設利用)を検討する
まず相談するなら「地域包括支援センター」へ。介護の相談が無料でできる窓口で、必要なサービスやケアマネジャーの紹介もしてくれます。窓口に行かなくても、まずは電話一本で大丈夫です。
(参考:厚生労働省「地域包括支援センターについて」)
まずは「お住まいの市町村名 + 地域包括支援センター」で検索してみてください。
電話したら、こう伝えるだけで大丈夫です。
「母(父)の物忘れのことで、少し相談したいのですが…」
難しく考えなくて大丈夫。「困っている」という一言から、一歩が踏み出せます。
「続けるために休む」という選択も、とても大切です。

まとめ|正解より「安心できる関係」を
認知症の方への関わりに、完璧な正解はありません。
- ① 否定しない
- ② 気持ちに寄り添う
- ③ 無理をしない
- ④ その場を笑顔で終えること
少しずつで大丈夫です。あなたの関わりは、ちゃんと相手に伝わっています。
✅ 完璧に対応しようとしなくて大丈夫。今日から少しだけ、気持ちのハードルを下げてみてください。
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※本記事は、社会福祉士・介護福祉士の資格を持つ筆者が現場経験に基づいて解説しています。制度の詳細や個別の対応については、お住まいの地域のケアマネジャーや地域包括支援センターにご相談ください。
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