「介護休業って…なんとなく使いにくそう」
「周りで使ってる人、見たことないし」
「言い出したら、迷惑そうにされそうで」
そんなふうに感じて、一人で抱え込んでいませんか?
実は、その「言い出しにくさ」はあなただけのものではありません。介護休業の取得率はわずか1.4%(令和4年度 雇用均等基本調査/厚生労働省)。でも、使っている人が少ないのは「制度が使えないから」ではなく、正しく知られていないからです。
介護が始まって「もう仕事を辞めるしかないのかな…」と考えていませんか?
ちょっと待ってください。年間約10万人が介護を理由に離職していますが、辞めた後に「辞めなければよかった」と後悔する方は少なくありません。訪問介護事業所のケアマネジャーから、仕事辞めないといけないかもしれませんという言葉を聞いたという話を聞いたり、訪問先で無理しながら介護をしている人をたくさん見てきました。
この記事では、介護休業・介護休暇をはじめとした「仕事と介護の両立支援制度」の全体像を、実際に使えるレベルでお伝えします。
- 介護休業・介護休暇の正しい目的と使い方
- 2025年4月の法改正で何が変わったか
- 休業中にもらえる給付金の金額と手取りの実態
- 休業・休暇以外にも使える4つの両立支援制度の全体像
- 職場に言い出しにくいときの伝え方のコツ
はるぼぼ介護の現場で15年以上働いてきました。「仕事辞めないといけないかも・・」と話す方や、忙しそうな無理していそうな方を、本当にたくさん見てきました。この記事が、働き続けるための一歩になれば嬉しいです。
第1章 まず知ってほしい「介護離職」の現実
年間約10万人が介護を理由に離職している
厚生労働省の調査によると、介護・看護を理由とした離職者数は年間約10万人。40〜50代のベテラン社員が突然職場を去るケースも少なくありません。「毎日残業があって両立できない」「職場に言えなくて追い詰められた」——そうして離職を選ぶ方が後を絶ちません。
「辞めたら楽になる」は幻想
仕事を辞めて介護に専念すれば、一時的に時間の余裕は生まれます。でも現実には、こんな問題が待っています。
- 収入がゼロになり、介護費用を自己資金だけで賄う重圧がのしかかる
- 社会とのつながりが断たれ、孤立感・燃え尽き症候群に陥りやすくなる
- 要介護状態は年単位、場合によっては10年以上続くことがある
- 介護終了後の再就職は、ブランクが長いほど難しくなる
「介護が落ち着いたらまた働けばいい」——でもその「落ち着く」タイミングは誰にも読めません。離職は最後の手段です。まずは制度を使い倒すことを考えてみてください。
「何から始めればいいかわからない」という方は、まず地域包括支援センターへ。介護全体の流れを知りたい方は→ 【完全ガイド】介護が始まったら何をすればいい?
センターには、こんな相談が毎日寄せられています。
- 「夜中に親が急に外へ出て行ってしまい、警察に連絡したあとパニックになった」
- 「知らない業者が頻繁に来て、高額な契約を勝手に結ばされていた」
- 「遠方の親族が、実家に来るたびにお金を持ち帰ってしまう」
決して珍しいケースではありません。「こんなドロドロしたこと話していいの?」と思うことこそ、専門家を頼るべき場面です。仕事との両立についても、無料で具体的な作戦会議に乗ってくれますよ。


第2章 なぜ取得率1.4%なのか
最大の原因は「誤解」
取得率が低い最大の理由は、介護休業=介護のためにつきっきりで休む制度という誤解です。育児休業との混同もあるでしょう。育休は育児に専念するために取るものですが、介護休業の本来の目的はまったく違います(詳しくは第5章で)。
「介護が終わるまで休み続けるなんて、そんなに長く休めない」と思って諦めている方がいますが、それは大きな誤解です。介護休業は「介護の体制を整えるための期間」として使うものです。
「言い出しにくい」空気感の問題
制度の存在を知っていても、職場で取得を申し出るハードルは高いのが実情です。
- 「自分がいなくなったら仕事が回らない」という責任感
- 「評価が下がるのでは」という不安
- 上司や同僚に迷惑をかけたくないという遠慮
こうした心理的ブレーキが重なって、制度を知っていても使えない状況が生まれています。でも、次の章でお伝えする2025年の改正が、この状況を変えつつあります。
第3章 2025年4月から何が変わったか
2025年4月、育児・介護休業法が改正され、企業に対して新たな義務が課されました。「言い出しにくい」という最大のハードルを、法律が後押しする形に変わったのです。
個別周知・意向確認の義務化
家族の介護が必要になった従業員に対し、企業は個別に以下を行うことが義務付けられました。
- 介護休業・介護休暇などの制度内容を周知すること
- 制度の取得について意向を確認すること
改正前は「従業員が自分から申し出る」のが前提でした。改正後は「会社側から声をかける」義務が生まれました。「言い出しにくい…」と感じている方にとっては、会社から話しかけてもらえる追い風です。改正を切り出しのきっかけとして活用しましょう(詳しくは第7章で)。
詳しくは厚生労働省「仕事と介護の両立支援制度」のページもご確認ください。
第4章 知っておきたい「4つの両立支援制度」全体像
介護と仕事の両立を支援する制度は、休業・休暇だけではありません。まず全体像を把握しておきましょう。
なお、これらの制度の対象となる「対象家族」は、配偶者・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫です。同居や扶養の要件はありません。遠方に住む一人暮らしの親の介護でも、制度を利用できます。
| 制度 | 内容 | ✅ 使いどころ |
|---|---|---|
| 🗓 介護休暇 | 年5〜10日・時間単位でも取得可(有給休暇とは別枠) | 通院付き添い・役所手続きなど単発の対応 |
| 📋 介護休業 | 通算93日・3回まで分割取得可 | 介護体制を整えるための集中期間 |
| ✋ 所定外労働の制限 | 残業の免除(介護終了まで継続可) | 復職後・長期的な両立期間 |
| ⏰ 時短勤務等の措置 | 労働時間の短縮・フレックスタイム等(会社が選択) | 長期的に働き方を調整したいとき |



「休めない」と思っている方に知ってほしいのですが、残業を断る権利(所定外労働の制限)や時短勤務も立派な両立支援制度です。「休業・休暇は無理でも、何か使えるものはないか」という目線で制度を見直してみてください。
💡 制度を使える「条件」をサクッと確認
「うちの親の状態で使えるのかな?」「パートだけど大丈夫?」と不安な方のために、大事な条件を2つにまとめました。
① 「要介護状態」ってどのくらい?(介護認定がなくてもOK!)
法律上の条件は「ケガや病気、障がいなどで、2週間以上の期間にわたり常時介護が必要な状態」とされています。
役所の要介護認定(要介護1〜5など)をまだ受けていない段階でも、「2週間以上介護が必要な状態」に当てはまれば制度は使えます。「突然親が倒れて、これから手続きをする」という初期段階から使えるので、「認定が下りるまで待たなきゃ」と思わないでください。
② 契約社員やパート・アルバイトでも取れる?
正社員でなくても取得可能です(※日雇いの方は除きます)。ただし、勤務先に「労使協定」が結ばれている場合、週の労働日数が2日以下の方や、「休業終了時点で契約満了が決まっている」方は対象外になることがあります。
改正前は「入社6ヶ月未満の方は介護休暇の対象外にできる」という会社側の権限がありましたが、2025年4月の法改正でこの縛りは廃止されました。入社まもない方でも、単発の介護休暇(年5日)はすぐに使えます。転職したばかりで不安な方も、まず相談してみてください。
第5章 介護休業の「正しい目的」と攻めの活用術
「整えるための93日間」という発想
介護休業の本来の目的は、介護の体制を構築するための時間を確保することです。要介護認定の申請、ケアマネジャーとの連携、施設の見学・選定、在宅介護の環境整備……これらは平日の日中にしか動けないことばかりです。仕事を続けながら全部やるのは、現実的にかなり困難です。
だからこそ、「この期間で仕組みを作り切る」という意識で使うのが正しい活用法です。
3分割戦略が有効
介護休業は最大3回に分割して取得できます。「まとめて93日」ではなく、状況に合わせて分けて使うのが実践的です。
要介護認定の申請から介護サービス開始まで、役所・ケアマネ・施設見学など平日日中にしか動けない手続きをまとめて終わらせる期間です。ここで「体制の土台」を作ります。
在宅から施設への移行、病状の悪化、サービス内容の見直しなど「当初の想定と変わった」タイミングに使います。慌てずに動ける時間が生まれます。
使い切る必要はありません。突発的な入院・緊急対応・看取り期など万が一のときのための安心感として残しておきましょう。「いざとなれば使える」という心の余裕にもなります。
※分割取得は、「対象となるご家族1人につき通算3回・合計93日まで」という上限があります。一度復職した後に同じご家族の介護で再取得することは可能ですが、回数と日数のカウントはリセットされません。「父の脳梗塞で2回使い、数年後の別の病気で残り1回を使う」はOKですが、4回目は取れないのでご注意ください。
休業中にやるべきこと・動ける手続き一覧
- 要介護認定の申請(市区町村の窓口で手続き)
- ケアマネジャーを選ぶ・ケアプラン策定
- 介護サービスの種類を比較・見学(デイサービス、ショートステイ等)
- 訪問介護(ホームヘルプ)・在宅サービスの契約
- ショートステイの登録・体験利用
- 見守りカメラ・センサーなどのデバイス設置
- 金融機関・行政など、平日しか動けない手続きの集約
- 親族間での介護分担の話し合い
「将来的に施設入所が必要になるかも」という方は、早めに情報収集しておくと安心です。→ 介護がつらいと感じたら|施設入所のタイミングと選び方
第6章 給付金と費用のリアル
休業中の収入はどうなる?
介護休業中は、一定の要件を満たせば雇用保険から「介護休業給付金」が支給されます。申請は会社経由でハローワークに行い、給付金は本人の口座に振り込まれます。
※「一定の要件」とは、原則として休業開始前の2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12ヶ月以上あることです。今の会社で1年以上フルタイム(または週20時間以上)で働いている会社員・パート・アルバイトの方であれば、基本的には該当します。
- 支給額:休業開始前の賃金の67%
- 課税:非課税(所得税・住民税がかからない)
- 申請先:ハローワーク(会社が代行申請)
育児休業との違いに注意
育児休業中は社会保険料(健康保険・厚生年金)が免除されますが、介護休業中は免除されません。給付金67%から社会保険料が引かれるため、手取りベースでは50〜55%程度になることが多いです。
なお、介護休業中の社会保険料免除については、現在国会などでも議論が進められています。ただし、2026年現在の時点ではまだ免除制度は設けられていませんので、ご注意ください。今後の法改正の動向として知っておくと、情報感度の面でも安心です。
| 休業前の月給(額面) | 給付金(67%) | 手取り目安(約50〜55%) |
|---|---|---|
| 20万円 | 約13.4万円 | 約10〜11万円 |
| 30万円 | 約20.1万円 | 約15〜16.5万円 |
| 40万円 | 約26.8万円 | 約20〜22万円 |
※上記はあくまで目安です。実際の手取りは社会保険料率や扶養状況によって異なります。事前に会社の担当部署や社労士に確認することをおすすめします。
申請の大まかな流れ
- 会社に介護休業の申し出(開始予定日の2週間前までに書面等で)
- ※突発的な事態で2週間前の申請が間に合わない場合でも、会社は取得を拒否できません。ただし会社側が「開始日をずらしてほしい」と指定してくる可能性があるため、急な場合もまず一刻も早く第一報を入れることが大切です。
- 休業開始〜終了
- 会社がハローワークに支給申請
- 給付金が口座に振り込まれる
給付金は休業中にリアルタイムで毎月振り込まれるわけではありません。休業終了後に会社がハローワークへ申請手続きを行い、審査を経て振り込まれるため、実際に口座にお金が入るのは休業開始から約2〜3ヶ月後になります。
休業期間中の生活費・介護初期費用として、あらかじめ数ヶ月分の生活防衛資金を準備しておくことが、焦らず動くための最大のポイントです。
給付金でどこまでカバーできるかを考えるには、介護にかかる費用の目安を知っておくことが大切です。→ 【毎月いくらかかる?】介護保険の費用・自己負担の目安をプロが徹底解説
要介護認定が下りたあとに何が変わるかを知りたい方は→ 要介護認定後の不安を解消|介護度ごとのサービス・費用・時間が全部わかる


第7章 会社への伝え方・関係を壊さないコツ
「法律で戦う」より「一緒に解決策を考える」
制度は権利ですが、職場の人間関係は長く続きます。権利主張一辺倒ではなく、「会社にとっても、長く戦力として働き続けるほうが得」という視点で話すのが効果的です。
2025年改正を切り出しのきっかけに
「実は最近の法改正で、会社にも個別に周知する義務ができたそうで…」という切り出し方は、責めるニュアンスなく話題を出しやすいです。自分から申し出るのではなく、制度の話をナチュラルに引き出す糸口として使いましょう。
就業規則になくても法律が優先する
「うちの会社には介護休業の規定がないから取れない」というのは誤りです。育児・介護休業法は法律であり、就業規則の有無にかかわらず適用されます。万が一会社が取得を拒否した場合は、都道府県労働局の「総合労働相談コーナー」に相談できます。
- 「○月○日から△日間、取得したい」と具体的に伝える
- 業務の引き継ぎ計画を自分から提案する
- 復職後もフルコミットする意思を明確に示す
第8章 復職後も使える制度で「長く働き続ける」
「戻ったら居場所がなくなる」不安への回答
介護休業の取得をためらう理由の一つが、「休んで戻ってきたとき、自分の居場所がなくなっているのでは」という不安です。でも安心してください。復職後も、仕事と介護を両立するための制度は続きます。
復職後に使える主な制度
- 所定外労働の制限(残業免除):介護が必要な状態が続く限り、残業を断る権利がある
- 深夜業の制限:深夜(22時〜5時)の労働を制限できる
- 時短勤務・フレックスタイム等:労働時間を短縮する措置(会社が選択制で導入)
介護休業はゴールではなく「スタート地点」
介護休業で体制を整え、復職後は残業免除・時短勤務などを活用しながら継続的に働く。これが「仕事と介護の両立」の理想的な形です。「休んだら終わり」ではなく、「休んでから本番」という気持ちで臨んでください。
まとめ 制度は「戦う武器」じゃなく「働き続けるための地図」
介護休業・介護休暇をはじめとした両立支援制度は、会社と戦うためのものではありません。「働き続けながら、大切な家族の介護もする」ための道を示す地図です。
- 介護休業は「つきっきりで休む」制度ではなく、「体制を整えるための93日間」
- 3分割取得で状況の変化にも柔軟に対応できる
- 給付金は賃金の67%(非課税)・手取りは50〜55%程度
- 2025年改正で、会社から声をかけてもらえる仕組みが整った
- 復職後も残業免除・時短勤務など、続けて使える制度がある
使い方は人それぞれ、正解は一つではありません。大切なのは、一人で抱え込まないこと。制度を活用し、会社・ケアマネジャー・行政・家族と連携して、長く働き続ける道を選んでください。



あなたのキャリアも、あなたの介護も、どちらも諦めなくていいのです。この記事が少しでもお役に立てたなら嬉しいです。他にも介護に関する記事を書いていますので、よければご覧ください。
▼ 介護で無理しないためのヒントはこちら
→ 【保存版】家族介護で無理しないための考え方|頑張りすぎないコツをやさしく解説
▼ 仕事との両立で今つらい方へ
→ 仕事と介護の両立がつらいと感じる方へ|無理を減らす現実的な方法と対処法
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仕事の合間や休みの日にでも、大切に読ませていただきます。






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